最凶電話営業男の逆襲?

 以前に史上最凶最悪のセールス電話がかかってきて、ひどい目にあったことを書いたのだけれども、あの話はあれで終わりにはならなかった。後日談である。

 

 前の職場の同僚から突然電話がかかってきたのである。

 「『宇宙企画のカワサキ』ですが。」

 「ああ、私のホームページを見たんですね。」

 「実は私のところにもかかってきたんですよ。」

 「ええっ!」

 話を聞いてみるとこうである。

 今年の8月位に「宇宙企画のカワサキ」から突然電話がかかってきたのであるが、それが信じがたいほどの不愉快な電話だったので、そのことを職場で話したら、たまたま私のホームページを見て知っていた人が、私が同一人物の被害にあったことを彼に教えてくれたのだという。

 何ということだ。ということは、明らかに前の職場の名簿が業者に流れているのである。

 

 彼のところへの電話は私のところよりも3ヶ月位後にかかってきたのであるが、より以上に凶悪だったそうである。

 カワサキは私の時とまったく同じように「一点だけいいですか」と問い、「ええ」とうっかり答えたところをつらまえて、あれこれ難癖をつけてきたという。しかも、電話を切っても何回もかけなおしてきて、都合4回もかかってきたという。さらに、だんだんドスの利いた口調になり、最後には「住所はわかってるんだから、家に行くからな」とまで言ったそうである。

 うーむ。あの時は単なる研修だと思ったのだが、どうやらそういうことだけではないらしい。そもそもそんなに長期にわたって研修をしているとは思えない。いや、それとも、研修を終えて悪辣度のパワー・アップ完了で実戦に投入されたということか?

 いずれにしても、カワサキは今もあちこちに電話をかけまくっては、被害者を増やしているという事実が判明した。

 

 もしかすると、我が家にもその後も電話をかけてきているのかもしれない。だが、我が家ではその後「ヒツウチ」は極力出ないようにしていたので、わからなかっただけか? 実は被害にあった元同僚の家は、ナンバーディスプレイを導入していなかったので、何度も出るハメになってしまったのだ。もちろん彼もこれを機会に急遽ナンバーディスプレイを導入したという。

 「『住所はわかっているんだから』と言いつつも、カワサキが本当に来たりはしなかったのは、たぶん電話番号しか情報を持っていないからだろう」と元同僚は推測していた。名簿屋から情報を買う場合、電話番号と住所とはそれぞれ別料金なのだとか。

 

 今回の情報を得てから、「ヒツウチ」には極力どころか、一切出ないことにした。カミさんにもよく言っておいた。

 つくづく、ナンバーディスプレイサービスがあって助かった。しかし、このサービスを導入する際に、「プライバシーの保護」というものを持ち出して反対する手合いがいたというが、信じられない。それとも、もともとその手の業界の人達が反対したのか?

 

 ところで、「ヒツウチ」は出ない、と決めて数日後、不気味な電話があった。

 

 家にいる時に電話がかかってきたのだが、「ヒツウチ」だったので、いつものように出ないでいた。

 我が家の電話は常時留守電設定にしているので、自動的に留守電に切り替わる。その日もそうなった。

 たいていここで相手はすぐに切って、メッセージなしで終了、ということになるのだが、その日の電話は違っていた。

 なんと、留守電に切り替わった後、ずっと無言のままだったのだ。

 留守電は無言状態のまま録音を続ける。不気味な沈黙がずっと続く。ずっと切らない。うーん。

 とうとうその無言電話は、留守電のメモリーが一杯になるまで切ろうとはしなかった。

 いったい誰だったのだろう? なんとも気味が悪い。もしや、彼では……?

 

 いやはや、まったくブッソウな世の中になったものである。

 

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