俺は何をやっているのだ?
諸々の事情もあって、3年前に「学年主任」なるものになった。忙しくなった。もちろん今まででだって忙しかったであるが、それが一挙に1.3倍くらいになった気分だ(当社比)。しかも今までと忙しさの質がちょっと異なるのである。それは仕事が日常の精神を侵食しているように感じることである。
今までは担任を持った時には基本的に3つのことを中心に仕事をしていた。授業のこと、担任としてのクラス経営のこと、そして自分に割り振られた分掌の仕事のことである。
ところが、学年主任なるものになると、今までの3つに加えて、学年担任に関わる全ての仕事を視野に入れなければならなくなった。それも二手先、三手ぐらいまで先を常に見通していなければならないのである。
言葉にすれば簡単だが、これが自分の脳のキャパシティを完全に越えているように感じるのだ。そのため、いつも頭の半分以上の領域をこの仕事のことが占めるようになってしまったのである。パソコンで言えば、データを必要な時までハードディスクに格納しておくことができず、メモリー上に常駐するようになってしまったのである。
早い話が仕事のことが片時も頭から離れないのだ。
休日にはこれが顕著で、どこかに外出した時などはまだいいのだが、家にいると次から次へと仕事のことが頭に浮かんできて、「こんなことをしてのんびりしてられない」という気持ちになってしまうのである。そのため、録画したビデオを見ようとしても、オーディオで音楽を聴こうとしても、本を読もうとしても、体が思うように動かないのである。仮に実行に移しても、「こんなことをしていていいのか」という気持ちが常駐しているので、心ここにあらずで何一つ楽しめないのだ。そうしていたずらに非生産的な時間だけが過ぎていき、不安と憂鬱が増大していくのである。本来心と体を休めるはずの休日がその機能を果たしてくれないのである。
今年のゴールデンウィークは世間では10連休とのことであったが、結局仕事を4日間入れた。講習と部活の仕事だ。
休日だと不安に襲われるわけだが、職場に行って仕事をすれば、「仕事をしていない」という不安から逃れることは出来る。だが、基本的に仕事に追われまくる訳だから、ストレスはたまり、心身は疲弊していく。
結局、休日であっても仕事のある日であっても、精神を仕事に侵食されてしまい、心から何かを楽しむ、ということがなくなってしまったのだ。
記憶する限り、ここ3年間に見た夢はすべて仕事の夢である。それも例外なく仕事がうまくゆかない夢だ(今朝も見た)。そのため、睡眠から覚めるとひどく疲れている。眠りの世界ですらもはや安息の世界ではないのである。
実は今現在は休日の図書館に来ていて、さっきまで仕事をしていたのである。
その合間をぬって気分転換のつもりでこの文章を打ち始めたのであるが……。
今の自分の状態をワープロで打ちつつも、心の中で「仕事をしないでこんなことをしていていいのか?」という声がずっとこだましている。
自問自答してみる。「俺は何をやっているのだ?」と。仕事をしていないと不安と憂鬱とに襲われる。それを解消するためには仕事をするしかない。だが、仕事をすると疲労とストレスが増大し、休みがほしいと切実に考えるようになる。そして休みになると再び不安と憂鬱がに襲われる……。
声にならない声でずっと自問自答し続けている。「いったい俺は何をやっているのだ?」と。