成人式
娘が今年の一月に成人式に出席した。親としては一応感慨深い。「一応」はいらないか。
誕生日が5月なので、もうずっと前には二十歳になっていたのだが、二年くらい前から着物のセールス攻勢がすごかった。
どこで聞きつけたのかダイレクト・メールはバンバン来るし、セールス電話もガンガンかかってきた。
ダイレクト・メールはゴミ箱に直行させれば良いのだが、セールス電話はその都度断らなければならない。
だが、我が家の場合は実に簡単に断ることができた。
「妻の実家が呉服屋なので間に合っています。」
これでどんなセールス電話も一発で引き下がった。当たり前か。しかも本当の話だし。
例の成人式当日に倒産して逃げた「はれのひ」も相当にしつこいセールス電話だったらしいし、他の業者も似たような傾向だとか。ネットで調べてみたら、断っても何度もかけてくる業者もざらだという。高額商品なので売る側の競争が激化しているのだろう。結局相手のペースに乗せられて何十万も払うことになってしまうこともあるのだから、ホントそういうのに関わることがなくて僥倖であった。
そういう訳で、晴れ着はニョーボがどこかから調達してきた。
ただ、娘本人は式にも晴れ着にも全く関心がなかったみたいである。
近所の写真館で撮影したのだが、ずっとご機嫌斜めであった。帰ってきてから自宅のマンションの敷地内でも何枚かデジカメで写真を撮ったのだが、悲しいくらいに不機嫌な表情であった。
そんな感じだから、式にも当然のことながら当初は出席する意思は全くなかった。
「昔の同級生とかに会えるから行ってみてもいいんじゃないかな」と父親はやんわりと言ってみる。
もっとも、この父は自分の成人式の時には当日に寝坊して、行ったら式はもう終わっていたという間抜けなことをしでかしているので、あまり強くは言えない。
「式は終わっていたけれど、昔の同級生に会えてよかったよ」それは事実だし、他にも出てほしい理由もあったので、「出てみたら?」みたいなことはずっと言い続けていた。
そうしたら、幸いにも友達からのお誘いもあり、式に行くことにしてくれた。よかったよかった。
式から帰ってきた娘が、会場で友人と一緒に撮ったスマホの写真を見せてくれた。マンションの敷地内で撮った写真とまるで違っていい表情をしていた。
「あの時ももう少し笑ってくれれば」と言うと、「だって写真撮られるのイヤだったんだもん」とすげない返事。
ところで、娘の話によると「荒れる成人式」というのは本当らしく、区長に「ハゲッ!」とヤジを飛ばすヤツとか、スピーチの合間に勝手に舞台に上がるヤツとか、一升瓶の酒を持ち込んでそのまま飲んでいるヤツとかがいたらしい。いやはや。それらをいちいち注意する職員もツライだろうなぁ。
とにかく、娘は無事に会場である「ティアラ江東」で成人式に参列してくれた。やれうれしや。
何がうれしいって? 「ティアラ江東」というのは昔の「江東公会堂」。40年近く前、歌手の岩崎宏美がここで成人式の第一部の式典に出席し、第二部として成人式記念コンサートを行った場所なのである。つまり娘は岩崎宏美と同じ場所で成人式を迎えることができたというわけである。40年以上の岩崎宏美ファンとしてこんなうれしいことない。
ということで、親バカどころか、もっとくだらねー理由で娘の成人式出席にこだわっていたという、どーしようもないバカオヤジの話でした。ハイ。