運転つらい
毎年、夏休みにレンタカーを借りて車で出かける。
車の運転は基本的に疲れるのだが、定期的に乗っていないと運転を忘れてしまうので、夏には2回は乗るようにしているのだ。
そんで、今回もドッと疲れた。
レンタカー屋で「お盆の時期は事故が増えるので、十分注意してくださいね」と言われた。
何でもその店舗でも、8月はもう7件も事故があったとか。ひええ。
普段車に乗り慣れない人が、この時期にレンタカーを借りて乗るからそうなるのだと説明され、「そうだろうなぁ」と思ったのだが、それだけではないことが後にわかる。
朝、走り始めてすぐのことである。
一般道三車線の真ん中を走っていたのだが、後ろのトラックがいきなり左車線に路線変更して、猛スピードで俺の車を追い越したのである。
左車線はバスレーンを兼ねているので、前方の停留所ではバスが止まっているというのに、である。
俺の車を追い抜いたトラックは、今度は右のウインカーをつけて強引に俺の前に入り込もうとする。はっきり言って危険極まりない。
向こうの方がでかいし、こちらは家族も乗せているのだから、当然減速してヤツを入れざるを得ない。
その強引な追い抜きをされた後、気が付いた。
レンタカーというのはナンバーが「わ」なので、外から一目でわかる。
ヤツは「レンタカー」=「へたくそ」と考え、「後ろに付いていたくない」「強引に追い抜いちゃえ」「左車線は前にバスがあるけれど」「強引に割り込めばレンタカー運転手なんて減速してオレを入れるに決まっている」と考えて、それを実行に移したのだと思われる。すげえ傲慢。
そうかと思うと、逆に極端に車間距離を詰めて、後ろにぴったり張り付くようにして「あおる」車もいた。もっとスピードを上げろというのだ。
これもやはり相手がレンタカーだからこその狼藉なのだろう。これは決して単なる憶測ではない。
何故なら高速道で、やはり自分と同じように「わ」ナンバーの車が、後ろの車に張り付かれてあおられている様を見たのである。ご同輩、苦労しますな。
わかった。お盆近くになると、レンタカーで久しぶりに運転する車が増えるから事故が多くなるのは、レンタカーの運転手だけの問題ではなく、レンタカー相手に乱暴な運転を敢えて仕掛けるこの手の愚かな運転手がたくさんいるからだ。
だって、そうでしょ。
安全確保のために車間距離を開けることは、教習所でも初期の段階でかなりしっかりと教えこまれることである。
それだけじゃない。
かの『渋滞学』を著して渋滞のメカニズムを解明した東大教授の西成活裕氏も、
「高速道路では車間距離がおよそ40m以下になると渋滞が始まる」
ときっぱりと言い切っている。それ見ろ。車間距離を不必要に詰めることは危険なだけでなく、渋滞をも引き起こす迷惑なだけの行為なのだ。
車を運転すると疲れるのは、この手の人間性に問題がある方々と関わることが不可避となるからなんだよね。
日常生活やインターネット上などでも、ちょっと変だなと思える人をたまに見かけるが、たいていはこちらから遠ざかることは可能である。
ところが、道路というある意味閉鎖された空間だと、そうもいかない。
この日はその他にも、赤信号を平気で無視する軽トラックを二回も見かけた。郊外の方に出て来るとこういうのが増える。
高速の合流地点で、車間距離をぴったり詰めて2台まとめて強引に入ろうとしてきた乱暴運転の車もあった。
4WDのオープンカーに乗った若者たちが上半身裸でいたのだが、よくよく見たら後部座席の男は上半身だけでなく下半身もすっぽんぽんだった。
いたるところ奇人変人だらけである。これらの人と道路上でうまくやっていく自信は俺にはない。それでなくても人付き合いは苦手なのだ。
ところで、例によって後の車が車間距離を詰めて煽ろうとしていた時、何を思ったか高校生の娘が、持ってきていたウーパールーパーのぬいぐるみをリアガラスに向けて置いたのである。もちろん後ろの車から見えるような位置にだ。
「……何をやっている!?」
「いや、後の車の運転手さんに、心を和ましてもらおうと思って」などと言う。
いやいやいや、どう見てもおちょくっているようにしか思われないはずである。
しかも「ウーパールーパー」と言えば、正式名は「アホロートル」である。つまりは相手に向かって「アホ」と示していることになる。これではケンカを売っているようなものだ。
それでなくても人間性の疑わしい相手を更に挑発するようなことをするとは……頼む。娘よ、すぐしまってくれ!
世の中には車の運転が好きだと言う人が多いみたいだけれど、たぶん人間関係に精通している達人か、あるいはケンカの達人であるか、のどちらかではないか、と推測している。そうとしか思えないんだよな。