本気でダイエット

 安直なダイエットならば、何度か試したことはある。

 ラップを腹に巻いたりサウナスーツを着込んだりしてのランニングとか(ラップやサウナスーツはダイエットとして全く意味がないことを当時は知らなかった)。

 食事の時にウーロン茶を飲むというのもやってみた(同時に酒呑んでりゃ駄目だよな)。

 プール通いやスロージョギングは一定期間続いた。でも体重に何の変化もなかった。そうなると途中でやらなくなる。

 

 糖質制限をやろうと思ったのにはきっかけがある。

 職場の同僚で、太った体型だったのがみるみる細くなっていった人がいたのである。

 その人に「どうしたんですか」と聞いてみたところ、教えてくれたのがこの「糖質軽減ダイエット」だったのである。

 実例を目の当たりにしているので信頼度は高い。かつ、糖質摂取で太ったという経緯があるので、それの逆コースというのは何となく理に適っているような気もする。

 ということで、本気でこれに挑戦することとした。

 

 まず、米の飯を食べるのをやめる。小麦粉系も食べない。よって、パンもピザもパスタもラーメンもウドンも全面禁止。

 もちろん甘いものは当然のことながらご法度。仕事場の机にしまっておいた間食用のお菓子はすべて袋に入れてロッカーの奥に放り込んだ(食べ物が捨てられない世代なもんで……)。

 糖質の含まれた清涼飲料水の類も一切飲まない。カロリーオフを謳っていても甘ければ飲まない。

 

 朝食はサラダや茹で野菜を食べる。夕食は普通におかずだけで、主食を食べない。

 当初、困ったのが昼食だった。

 昼はいつもニョーボに頼んでお弁当を作ってもらっている。これはさすがにおかずだけ、という訳にはいかない。

 そこで、米の飯の代わりになるものをあれこれ試行錯誤してみた。千切りキャベツ、茹でもやし、厚揚げ等。

 その結果、ソフト絹厚揚げが割におかずと合うことが判明。立派にコメの代役を務めてくれることとなった。

 

 ただ、麺類、特にラーメンが大好きなので、これの代役に頭を抱えた。

 まず「糖質0g麺」なるものを大手の紀文が出していることを知り、これに飛びついた。なんでもおからとこんにゃくが主原料であるとか。

 だが、食べてみたところ、やたらと麺が柔らかくて、のびきった麺の食感だ。お世辞にもおいしいとは言えない。

 そこで、次はズバリ「こんにゃく麺」なるものを試してみた。これなら麺に弾力はある。

 これを袋から出してザルにあけたところ、こんにゃく独特の臭気が。うぐっ。これはけっこう強烈である。そこで一旦湯がいて臭みをとることとする。

 それをそのまま中華スープの中に入れ、ラーメンの代用として食べてみた。うーん、おいしくない、というか石塚英彦風に言うと「ずいまー」である。

 ひところアキバで「おでん缶詰」が流行った時、それの展開商品として「ラーメン缶」なるものが登場したが、あれがこんにゃく麺であった。小麦粉の麺と違ってスープに浸かりっ放しでものびないからである。おでん缶ほどのヒットにはならなかったのは、やはりこんにゃく麺は小麦粉麺とは別物だからかもしれない。

「豆乳とこんにゃくで作った」という麺も試してみたが、これもおいしくなかった。

 

 休日の朝兼昼食は家族でラーメンを食べることが多いのだが、その時にニョーボが俺のために麺の代用として「くずきり」を買ってきてくれた。

 せっかく買ってきてくれてなんなのだが、ニョーボよ、葛粉はでんぷんだから糖質なのだよ。

 でもまあせっかく買ってきてくれたのだからと、温めてラーメンスープの中に入れて食べる。これもおいしくない。何かスープまでおいしくなく感じられる。

 食後、ため息をつきつつ、ふと何の気なしに子供の残したどんぶりからラーメンスープをちょっと啜ってみた。

「!」

 旨いのである。自分の残したどんぶりのスープとは別物と言ってよかった。

 この時にやっと理解した。ラーメンでは通常の小麦粉の麺はスープをすって味わい深くなるのと同時に、小麦粉の旨みもスープに溶け出し、相乗効果で旨さを増しているのだという事を。

 こんにゃくもくずきりも麺に味がしみ込みにくいし、スープに味を加えることもない。これでは代用にならない訳である。

 ということで、麺類の代用品に関してはもはやお手上げである。

 それにしても、こんにゃくもくずきりも舞台が変われば名優となりうるのに、無理やり別のジャンルに引っ張り出されて、しかも文句まで言われるのだからさぞや心外なことであろう。

 

 さて、こんな感じで始めた糖質制限ダイエット。どうやることやら。

 

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