特別便がやってきた
「重要」「親展」などと書かれたものものしい封筒が届いた。
見てびっくり、巷で噂の「ねんきん特別便」ではないか。(ちなみに何故「ねんきん」と平仮名なのであろう。納税者をバカにしているのであろうか?)
現在の我が雇用主は東京都。したがって共済組合に加入しているのだが、もちろん採用されて以来ずっと天引きで払っているし、公務員関係なのだから、まさか記録紛失などあるはずないと高をくくっていたのであるが、考えてみれば年金記録を紛失したのは他ならぬその公務員なのであるから、この信頼感には意味がなかった。
とにかく恐る恐る中を見てみると、確かに現在の職に就いた日からの加入記録はちゃんとしている。が。
実は現在の教職に就く前、一年間ほど民間企業に勤めていたことがあるのだが、そこでの厚生年金を払った記録がすっぽり抜け落ちているではないか。がーん。
たかが一年程度とはいえ、当時の安月給の中から納めた年金なのだから、それをなかったことにされてはあんまりである。
当然調査を依頼することになるのだが、困ったことに「年金手帳」がどこにあるのかがわからない。
確かに会社を退職する時、オレンジ色の表紙のやつを受け取っている。「次の職場でも使う大事なもの」と、その時の経理の人に言われたことまで覚えている。
東京都の職員になった時に、当時の事務担当の人にそれを見せたこともなんとなく記憶にある。だが、それ以降のどこでどうしたかの記憶が全くないのだ。
なにしろ20年以上前のことである上に、その間に四回も引越しを経験している。大事なものだからと大事にしまいすぎてどこへいったかわからなくなった典型的な例である。
試みにちょっと探してみたが全く見当たらない。何しろ20年以上見たことがないのだから当然かもしれない。
年金手帳がなければ記号番号がわからないから、照会のしようがない。
呆然とする。
しかしいつまでも呆然としていても仕方がないので、とりあえず特別便に記載されている「ねんきん特別便専用ダイヤル」に電話してみることにする。だが、何回かけても、混雑していてさっぱりつながらない。
そりゃあそうだろう。
我が家に来たのは「基礎年金番号に結びついていない5000万件の記録」の中の一つに過ぎないのである。他の人達だって今頃は血相変えて社会保険庁に電話をかけまくっていることは想像に難くない。
中にはもっとひどい被害(!)に遭っている人だっているだろう。
ちなみに実家の兄の場合、十数年勤めた自動車会社の記録がまるっきり抜け落ちていたそうである。
そんな人達がたくさんいる中、記号番号もわからぬたかだか一年程度の記録が真剣に調査されるとはつゆ思えない。なにしろ今までが今までなのだ。
無念であるが、払い込んだ厚生年金については諦める他ないのか。とほほ。
今から20年近く前、仕事で九州のある大きなホテルに泊まったことがある。やたら辺鄙な場所にあり、その割に施設はきれいで立派、その一方で食事がやけに貧相だったのが印象に残っている。
そう、それこそが年金使って建設したものの、あちこちで破綻していった悪名高き大型保養施設「グリーンピア」だったのである。
泊まった当時から「こんなんでやっていけるんかいな」と思っていたら、案の定やっていけなかったという訳である。
東京都の新銀行もそうだが、そもそもその業界のプロ達がしのぎを削って競い合っている世界に、資金繰りの苦労を何一つ知らない役人がポッと競争に参加して勝ち抜いていけるなどと考えるのはとんでもない錯誤ではあるまいか。
しかも、困ったことにトップをはじめ、誰一人として経営破綻の責任をとらなかった。おいおい。
年金記録を紛失させたり、年金で事業に手を出して失敗したりと、いったい彼らは何をしておるのか。
だから公務員はダメなんだ、という話になってしまう。
そう、一部の役人が不誠実な仕事をするたびに、公務員全体の信用が失墜していくのだ。
昨今は「公務員」というそれだけで、マスメディアの論調はまるで国賊であるかのように厳しい扱いである。。
一部の不心得者によって、年金記録を紛失され、かつ肩身も狭い思いもしなければならぬというのはなんとも情けなくも悔しいことである。