迷惑メール恐るべし
迷惑メールが鬱陶しい。一日に20〜30通の迷惑メールが押し寄せるのである(そのうち大体3分の2程度が海外からのメール)。
一時期、プロバイダーの迷惑メールブロックを設定したのだが、このフィルターが強力過ぎて、ちゃんとした友人知己からのメールまで止めてしまうことが判明。仕方なく現在はフィルターを解除して全部のメールを受け入れている。
もちろんこの手の迷惑メールは速攻削除すればいいのだが、数が多い上に、合間にちゃんとしたメールも混じっているので、色々と気を使ってどうにも面倒なのである。
さて、そのような迷惑メールであるが、たまに文面を読んだり、そこに出ているURLからHPを覗いてみたりすることもある。最近はどのような方法でひっかけようとしているのか、後学のために敵の手口を知っておこうという興味本位の気持ちからである。
もちろんテキストメールの場合、添付ファイルを開かなければまず危険性はないし、HPにアクセスするにしても、ちゃんとウチのパソコンにはウィルスチェックソフトのノートンが入っていて常に最新のウィルス定義ファイルに更新もしている。また、ルーターも使用しているし、ファイア・ウォールも設定しているので、一般的な防御としてはほぼ万全と言っていいだろう。
そういう訳ですっかり油断しきっていたのだが、「油断大敵」とはよく言ったもので、とんでもない地雷を踏んでしまった。
明らかに迷惑メールとわかっていたのだが、「どんなHPで誘いこもうとしているのかな」と、あるメールに出ていたURLをクリックした瞬間である。
バババッといくつかのブラウザーのウィンドウが開いた。「なんか、ヤバイ」と思ったのも束の間、続いてノートンの「警告」画面が立ち上がるのだが、な、なんと、次の瞬間にはノートンが強制終了させられてしまったではないか!
今までは危険なページには必ずこのノートンの「警告」画面が表示されてアクセスがストップし、それによって危険を回避することが出来てきたのであるが、今回はそれが弾き飛ばされてしまったのである。
絶句する自分の前に、「登録有難うございました」という画面が立ち上がっていた。あわてて全てのウィンドウを閉じたが、「あるいは手遅れだったかもしれない」という嫌な気分が残った。
腕に覚えのある用心棒を揃えて安心しきっていたら、突然あらわれた謎の怪人にそれらがバッタバッタとなぎ倒されてしまったような慄然とした気分であった。
「このままで何もなくすめばいいのだが……」と思ったのだが、もちろんそんなことがあるはずもなかった。
2週間ほどして来た迷惑メールの中に、どうも気になるものがあったので開いてみたら、このような文面だった。
【料金に関する重要通知】
個人認識ID番号S01100****様へ
AVマニュアルをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
【重要通知】でございますので、必ず全文をご確認いただきますようにお願い致します。
貴殿は2007-05-** **:**:**にご入会して頂けてから、14日も経過しておりますが、未だに、番組料金99450円のお支払いがされておりません。 至急、下記【口座案内及びカード決済】をご参照の上お支払いください。
【口座案内及びカード決済】
貴殿は、利用規約に同意し、入会をして頂けておりますが、ご滞納なさってる現状は、利用規約第13条、料金に関する項目の規約違反をされております。早急にお支払いして頂けませんと、利用規約で定める処置の開始をさせて頂く事となりますので、早急なご対応をお願い申し上げます。また悪意を持った入会者及び、悪質な利用者とみなしまして、関係各所、関係サイトへ情報の開示と提供を行う場合もございますので、予めご了承ください。
また、30日以上の経過を持ちまして、現状のキャンペーン料金ではなく、正規料金でのご請求、延滞金の計上もございます。併せてご了承ください。
※ご不明な点や使用上の問い合わせ、質問は下記サポートセンターへご連絡ください。
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この後に、「お客様ご登録情報」として、「ID番号」「登録日時」の他に、「IPアドレス」「プロバイダー」「OS」「ブラウザー」「アクセス履歴」といった項目が並んでいる。
さすがにこの「お客様ご登録情報」を見たときには嫌な気分になった。相当に悪質な相手である。
何故HPにアクセスしただけなのに、こちらのことがわかってメールを送ってきたのか? 実は最初のメールに書かれていたURLが、「リファーコード付きURL」というもので、ホームページの後にこちらのアドレスが暗号化されているため、そこからアクセスするとこちらのメールアドレスがわかってしまう、という仕組みなのである。これは後から調べてわかった(確かに勉強にはなった)。
請求金額が「99450円」と中途半端なのは、ATMで振り込めるギリギリの金額に設定したためであろう。
パソコンに詳しくない人であったなら、この時点で不安になって、「入会などしていない」等、先方に何らかの形で連絡をとってしまう危険性がある。
だが、冷静に考えれば、この「お客様ご登録情報」によって、逆に相手はこれ以上の個人情報はつかんでいないことを暴露しているのである。
IPアドレスとアクセス時刻から個人情報を特定できるのはプロバイダーだけだが、プロバイダーは個人情報保護法があるため、司直の手でも入らない限りこれを明かすことはありえない。
「そちらの『OS』や『ブラウザー』の種類も知っているぞ」という脅しに至っては、ただのハッタリに過ぎない。そんなもの知られたからといって何がどうなるわけでもないのだ。
ただ、こちらのメールアドレスが「生きている」ことを知られてしまったことは痛かった。
基本的にはこの手のメールは放置しかないので、日に2〜3通来るこのメールも放っておいたら、今度は文面こそ同じであるものの、おどろおどろしいレイアウトのメールが来るようになった。
【料金に関する重要通知】 個人認識ID番号 S01100****様へ 貴殿は、利用規約に同意し、入会をして頂けておりますが、ご滞納なさってる現状は、利用規約第13条、料金に関する項目の規約違反をされております。早急にお支払いして頂けませんと、利用規約で定める処置の開始をさせて頂く事となりますので、早急なご対応をお願い申し上げます。 また悪意を持った入会者及び、悪質な利用者とみなしまして、関係各所、関係サイトへ情報の開示と提供を行う場合もございますので、予めご了承ください。
貴殿は2007-05-** **:**:**にご入会して頂けてから、28日も経過しております。
未だに、番組料金99450円のお支払いがされておりません。
至急、下記【口座案内】をご参照の上お支払いください。
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うーん、不気味ではある。だが、もちろん放置。
「30日以上の経過を持ちまして」「正規料金でのご請求、延滞金の計上もございます」とあるが、どれくらいアップさせるつもりなのだろうとずっと経過を見守っていたら、40日以上過ぎても文面は変わりなかった。
「これで終わりかな?」とちょっと安心していたら、今度はこんな文面のメールになった。
最後通告
当方より再三のご連絡に対しまして、ご対応して頂けませんでしたので、誠に遺憾ですが、7月19日を持ちまして少額訴訟とさせて頂きます。 少額訴訟金額は、正規料金150,000円と遅延損害金(12.2%×経過日数)を合わせました金額のご請求、及び悪質な入会者と判断せざるを得ない為、サーバー使用料、事務手数料を含めました金額のご請求をさせて頂くこととなります。
当方からの最終和解交渉としまして、金44、450円にての退会手続きを7月19日まで受け付けます。7月19日までに金44、450円をご入金頂けない場合は、上記、通常請求から少額訴訟へとかえさせて頂きます。
【お支払い案内ページ】
ご対応無き場合は、当方からの最終和解交渉へのご対応の意思がないと判断させて頂くことをここに通知致します。
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いやはやすごいもんである。「少額訴訟」だと。犯罪者が司法の場に出て来ようとは恐れ入れるが、そもそも名前もわからない相手にどうやって訴訟を起こすというのだろう?
もちろん、これらのメールも放置。
で、「最終和解交渉」締め切りの19日が過ぎたら今度はこんなのが来た。
最期確認
当方より再三に渡りご連絡致しておりました最終和解交渉の期日19日が過ぎましたが、ご対応して頂けませんでしたので、誠に遺憾ですが、準備ができ次第、少額訴訟とさせて頂きます。
少額訴訟金額は、正規料金150,000円と遅延損害金(12.2%×経過日数)を合わせました金額のご請求、及び悪質な入会者と判断せざるを得ない為、サーバー使用料、事務手数料を含めました金額のご請求をさせて頂くこととなります。
何某かの理由で、19日までにご対応できなかった場合を想定致しまして、7月23日月曜日15時を最終期限と致します。
当方からの最終和解交渉としまして、金44、450円にての退会手続きを行いますので、ご対応の意思が御座いましたら、必ず7月23日月曜日15時までにご対応をお願い申し上げます。
【お支払い案内ページ】
ご対応無き場合は、当方からの最終和解交渉へのご対応の意思がないと判断させて頂き、追って当方より電話にてご連絡を差し上げます。
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「最期」確認って……ヒットマンでも雇ってオレを殺す気なのだろうか? この程度の金額の為にいちいち殺し屋を雇っていては割りに合わんのではないかと思うが。
「当方より電話にてご連絡」というのは確かに不気味ではあった。実はメールアドレスが知られてしまった場合、可能性は低いものの、ある方法で個人情報を探る方法というのはあるのだ(実はそのことに気がついた時さすがにゾッとした)。
しかし、結論から言うと電話はかかってこなかった。
そして、これ以降、以前と同じ色付き背景のおどろおどろメールがまた来た。内容は以前と同じであり、はっきり言ってもう打つ手がないのであろう。やれやれこれでやっとホッ一息である。
だが、このようなメールを送りつけて、人を心理的に参らせて金をまきあげようとする卑劣な人間がすぐ近くにいることは事実である。
そして、その存在は決してバーチャルなどではないのである。
そう考えれば、やはり迷惑メールは決して侮ってはならない、恐るべしものなのである。