大丈夫だっての
新札への切り替わり時期なので、財布の中には常時新札と旧札とが入り混じっている。しかも、かつては殆ど見かけなかったニ千円札が、最近になって銀行のATMなどから出てくることが多くなり、財布の中には計7種類の札が混在することとなって、紛らわしいったらない。
通常我々は財布に入ったお札の種類を判別する場合、色やデザインで判断することが多いと思う。財布に入った状態でははじの方しか見えないので、色やデザインの雰囲気で区別をし、書いてある数字までいちいち確認することはあまりないと思う。ないんだってば。
その点で、新札の一万円札と千円札は、旧札とデザインが似ているので、今までどおりの感覚ですぐにわかるのだが、見慣れないデザインの新5千円札と二千円札とは、慣れないうちは咄嗟に判別しにくい。しにくいんだってば。
さて、先日都内某所で買い物をした時のことである。
そこの店はいわゆるディスカウントの店で、値段が安いためいつも混んでいる。その日もレジは長蛇の列となっていた。
一通り買い物を終えたオレはその列に並んだ。列は順調に進んでゆき、やがてオレの番になった。
買い物の合計金額は2,260円で、オレは財布の中から二千円札と五百円玉を取り出して、レジのお姉ちゃんに渡した。
ところが、レジのお姉ちゃんはおつりとして千円札二枚とジャリ銭をよこしたのである。
「あれ?」
「どうしました?」
「なんでこんなにお釣りがあるんですか?」
「はぁ?」
「多くないですか。」
「ですが、2,260円の買い物で五千円札を出されたのですから……」
「えっ! 今出したのは二千円札ですよね。」
「いいえ。」
彼女はオレの払った紙幣をあらためて広げて見せてくれた。樋口一葉の顔がある。なんてこった、二千札だと思って支払ったのは実は五千円札だったのだ。あっちゃー。
「ああっ、そうでしたか。五千円札を出していたのか。間違えちゃいました。」
レジの後に並んだ多くの人々の「ヘマして時間を食いやがってコノヤロー」という視線が痛い。
オレは精一杯の愛想笑いをしつつ、
「いやー、まだ新札になじめなくって……」
と周りに聞こえるように言って、あくまでもその間違いが「止むを得ないもの」であることを強調しつつ、お釣りを受け取ってその場を立ち去ろうとした。
するとレジのお姉ちゃんは、あらためてつり銭を差し出しながら笑顔で言ったのである。
「大丈夫ですかー。」
オレはお釣りをわしづかみにすると、逃げ去るようにして店の外へと走り出た。
外へ出てしばらくすると、あらためてレジの姉ちゃんの言葉がボディブローのようにじわじわと利いてきた。
ああそうだよ。確かにオレはお札の種類を間違えたよ。間違えました。だけどさぁ、言うに事欠いて「大丈夫ですか」はないだろ? 「大丈夫ですか」は! そういう場合は「よろしいですか」だろ! まるでオレがどこかおかしいみたいじゃないか。単なる勘違いに過ぎないんだっての!
なんとも腹立たしい気分だが、そこは安くてよく利用する店なので、「もう二度と行くもんか」と言えないところがなんともくやしい。