SHURE E2cで聴く

 ソニーのハードディスクウォークマンNW-HD1を聴くのに、ずっと同じソニーのインナーイヤー型ヘッドフォンMDR-EX51LPを使ってきた。値段の割に良い音で、密閉型(カナル型)のため、音に厚みがあって低音も良く出るので、圧縮オーディオには最適だった。

 その環境で十分に満足していたのだが、人間ってわがままなんだな。雑誌のヘッドフォン特集を見ているうちに、米国はSHURE社のE2cが、「ドライバーユニットが大型で低音の鳴りが良く、中音域の分解能に優れる」等、かなり高い評価なのに、ぐっときた。どうしてもその音を体験してみたくなったのである。

 パパイヤ鈴木も愛用しているというSHUREE2c。その実力はいかに。

 

 実売価格は9,000円程度。それまで愛用していたソニーMDR-EX51LPの約3倍の値段だ。だから、3倍いい音がしなければ納得はいかない。

 もっとも雑誌の特集では「安価な本格カナル型として人気のモデル」とあった。9,000円で安価か? 確かにオーディオの世界は底なし沼だから……。

 付属品。立派なキャリングケースがついてくるが、ヘッドフォンだけを別携帯することはあまりないので、付属品入れとして利用している。細々としたものがなくならなくて重宝。

 それぞれS・M・Lの3サイズが用意された2種類のイヤパッドがつく。ソニーのMDR-EX51LPにもS・M・Lの3サイズのイヤパッドがついてくるが、SHURE社のそれは、総じてサイズがでかいような気がする。体の大きい米国人向きだからか?

 耳垢などの汚れが侵入・蓄積するのを防ぐために、この「ワックスガード」というのを貼り付けよとのこと。また、汚れたら交換せよとのこと。5組ついてくるが、なくなったら別売りしているのを買えとのこと。はっきり言って面倒くさい。

 ソニーのMDR-EX51LPなどは、最初から耳垢等が入らないような設計になっているというのに。

 この説明書にあるように、耳の後ろからコードをはわして、装着する。慣れないとかなり手間取る。慣れてからもやっぱり面倒くさいが。

 

 買い物をしたり話しかけられたりした時は、その都度ヘッドフォンをはずすことになるのだが、再度またつけるのが実に面倒に感じる。

 

 シリコン製のフレックス・イヤパッド。

 思ったよりも硬く、耳に合わなかったり、慣れていないと、異物感があったりする。

 もっとも、慣れてきてもあまり快適な装着感とは言いがたいが。

 ウレタン(?)製フォーム・イヤパッド。

 これは耳栓に使うのと同じ材質のもので、最初に指でつまんで小さくして耳穴に挿入。その後耳の中で元の大きさに戻っていくのでぴったり密着するという訳。こちらの方が装着感はずっと良い。

 ただ、つける手順が面倒なのと、汚れやすいのが難。

 

 

感想

@音質。ユニットがでかいので、低音が豊かになるのかと思ったら、そうでもない。高域もそんなに伸びない。全般的に中音域が充実しているという印象。再生レンジが広いというのではなく、むしろ限られた帯域をしっかり鳴らすタイプに感じる。そういう意味では中音域の分解能は優れていて、ダイナミックで豊かな音を聞かせる。
 思うに、この傾向はiPodの音の特性を補うのにぴったりなんじゃないだろうか。パッケージにもiPodのイラストが書いてあるし、もしかしたらiPodを最初から意識した音作りなのかもしれない。

 

A装着感。上に書いたとおり、フレックス・イヤパッドの方は装着は比較的簡単だが、装着感がいまひとつで、音質もフォーム・イヤパッドより劣る。一方フォーム・イヤパッドは装着が面倒で汚れやすいが、いったんきちんと装着すると装着感も比較的良く音も良い。どちらも帯に短しタスキに長しという所か。両方に共通しているのは、正しく装着しないとそれだけで音が悪くなるという事実。いずれにしても面倒なシロモノである。

 

B遮音性。この製品は音質確保のために遮音性を高めている。遮音性が高い、ということは、音漏れしないということであり、周囲の迷惑にならない、という点では良い。ただ、外部の音が入ってこないということに関しては、長短両方があるだろう。音楽に没頭できるという点では長所なのだろうけれど、道で誰かに声をかけられても気がつかないし、乗り物の車内放送も全く聞こえない。一長一短だが、地下鉄や飛行機等の騒音の激しい環境では、この遮音性は確かに圧倒的な強みになる。

 

C断線しやすいらしい。太いコードなので「これなら大丈夫か」と思ったら大間違い。インターネットの「価格.com」などの掲示板を見ると、かなり断線しやすいらしい。アウトドア使用がメインなので、これは致命的。

 

まとめ

 海外製品というのは、概して「いかにして性能を引き出すか」という部分が、ユーザーの側にある程度委ねられているように思う。すなわち、購入したからといって、即最高のパフォーマンスを得られるわけではなく、ユーザーが色々と創意工夫することによってその力が発揮されていく、そんな傾向があるのではないだろうか。

 このE2cも、装着の仕方やイヤパッドの種類によって、音が変わってくることは既に述べたとおりである。

 そして、問題はそのプロセスを「楽しい」と感じるか、「面倒」と感じるかであろう。前者の人には魅力的なヘッドフォンであっても、後者の人には厄介なヘッドフォンということになる。

 えっ、私はどうかって? うーん、今のところ、その中間あたりかな……。

 

 今まで使用していたソニーのMDR-EX51は装着しやすいし、装着感もE2cよりずっといい。実売価格3,000円でこの音質なら上出来のヘッドフォンだ。ポータブル・オーディオや圧縮音楽との関わりの長いソニー製品の強みを感じさせる。

 残念ながらソニーでは、この型の製品でMDR-EX51EX71の上のクラスは、一気にQUALIAシリーズ「MDR-EXQ1」(21,000円。現在販売休止中)まで飛んでしまうのだが、もし、7,0008,000円クラスの音質を充実させた密閉型(カナル型)ヘッドフォンが発売されたら、E2cをやめてそっちに乗り換える可能性大だ。

 E2cの実力は認めるけれども、インドアと違って、アウトドア使用のポータブル・オーディオにおいて、出来るだけ手軽で簡単なことは、やっぱり魅力的なんだな。

 

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