本格中華を堪能す。

 「たまには本格的な中華料理を食べよう」ということで、友人家族と久しぶりに中華街まで足を運んだ。

 「せっかくだから……」ということで中華の老舗「萬珍楼」へ入る。同じ老舗でも「聘珍楼」よりはやや値段が安いし、なによりも店頭にあったメニューの中の「特製子豚の炭火焼き」に惹かれたのだ。中華の高級料理「子豚の丸焼き」と同じ手法で作成された逸品を、「一生に一度は食べたい!」と、以前からずっと恋焦がれていたのである。しかし、当然のことながら値段は高かった。店に入ってからも躊躇していたのだが、同行した友人が「ここで食べなきゃいつ食べるんだ」という「食べない後悔より食べて後悔」の人生観の持ち主だったので、結局今回あこがれの味を口にすることができた。

 

 2002年の5月に火災で全焼したものの、立派な建物で復活。おかげで中も外もえらくきれいだった。

 さすがに土曜日なので込んでいて、予約なしで1時40分頃に行ったら、「6人様だとお席を用意できるのが3時頃になります」と言われた。

 まあ、予約もせずに行ったので仕方がないのだが、それまで中華街をぶらぶらして過ごし、2時50分頃に店に戻ってきた頃には空腹の極致であった。さあー、食うぞー!

「蒜香掛爐鶏(釜焼き地鶏のニンニク風味)」 2,800

 料理長おすすめ料理の中の一つ。皮がパリッと香ばしく、肉はしっとりと柔らかい。「これが鶏肉か!?」と思わせるような逸品。すごい技術に感心。

「X..炒鮮貝(ホタテのX.O.醤炒め)」 3,900

 「X.O.醤」というのは、干しエビや干し貝柱などの旨味のでる素材をブレンドして作り上げた中華の調味料で、市販もされているが、もちろん萬珍楼では店の独自のものを使用していると思われる。干し貝柱の香りと味が利いていて、それが生のホタテの味を引き出している。

「大紅乳豬件(特製子豚の炭火焼き) S 6,800

 普通サイズだと8,000円だが、さすがに手が出ず、このサイズにした。それでもこれだけで6,800円! 中華の超高級料理なので、一度は口にしておきたいという清水の舞台から飛び降りる心境で注文した。

 味は「さすが」の一言。皮のぱりぱりさくさく感が素晴らしい。北京ダックの海鮮醤のようなミソがついてきたが、つけなくても十分美味しい。でも、もう一生口にする機会はないかも……。

「柱侯炆牛腩(和牛の三枚肉煮込み)」 3,000

 牛肉を煮込んだ料理だが、硬い繊維質の肉が、ホロホロと崩れるくらいに柔らかく煮込まれている。「柱侯」というのは醤の名前らしい。八角の香りも利いていてこれも美味。

「沙汁大蝦球(大海老のマヨネーズからめ)」 S 2,500

 いわゆる「エビマヨ」だが、本格的な中華料理屋で食べるのは初めてだった。想像以上に美味しかったので驚き。マヨネーズソースはコンデンスミルクか何かを混ぜ合わせているようで、甘め。それが揚げたエビに良く合う。エビ料理は二品頼んだので6尾のSサイズにしたが、それでも結構なボリューム。ちなみに通常サイズだと8尾で3,000円。

「川汁大蝦球(大海老のチリソース」 S 2,900

 これも定番の「エビチリ」。思ったよりも唐辛子が利いているようで、辛味が強い。しかし、それでいて甘みも強く、そのバランスが絶妙。もちろんエビはぷりぷり。文句なし。これも6尾のSサイズにしたが、通常サイズだと8尾で3,600円。

「X..炒小松菜(小松菜のX.O.醤炒め)」 1,200

 青菜を炒めただけの料理だが、こういうシンプルなものほど、店の実力が出る。シャキシャキとした青菜の食感を残したまま、しっかり火は通して香ばしさを出す技術が難しいのだ。もちろん萬珍楼の青菜炒めは絶品だった。しかも先ほどの「ホタテのX.O.醤炒め」とは「X.O.醤」の香りが少々異なる。料理によってX.O.醤も変えているのか? むむむ。

「揚州炒飯(五目炒飯)」 1,100

 これも炒めものの実力が発揮される炒飯。角切りで入っている焼き豚が美味しい。意外だったのは、思ったより薄味だったこと。濃い味の料理が続いた後の締めくくりのご飯ものなので、あえて抑えているのかもしれない。そのせいか、もうかなり満腹近かったのだけれど、すいすいと胃に収まった。

「家郷炒米粉(広東焼きビーフン)」 1,300

 ビーフンは家庭で料理しようとすると、戻し加減が難しいし、炒めても鍋に焦げ付きやすく、かなり技術を必要とする料理であることがわかる。もちろん萬珍楼の焼きビーフンは完璧な戻しと炒め。恐れ入りました。

「マンゴーのシャーベット」 450

 シャーベットではあるが、ねっとりと甘くて濃厚。だが、しつこさはまったくなし。

 デザートメニューが別だったので、これのみ中華名をメモするのを忘れた。

 

 ところで、店員がやたらキビキビと動いて、空いた皿をすぐにテキパキと片付けるのが印象的だった。

 やたら混雑していたので、客の回転を早めるためだとは思うのだが、もしかしたら我々が不審人物と見られていた、なんてことも考えられなくはない。

 というのも、我々は、次々に来る料理の写真を撮るわ、箸袋の裏にメモはとるわ、料理を一口食べるたびに「これの下ごしらえは云々」「これの調味料は云々」とかなりマニアックな会話はするわで、どうもまともな客には見えなかった可能性が高いのだ。

 店の奥の方で、「あいつら味を探ってるぞ。空いた皿をすぐに回収して味を研究されるな!」なんて会話がかわされていたりして……。まあ、そんなはずはないか(笑)。

 

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