場末のサイパン

 25年前、新婚旅行に行くのにグアムかサイパンが候補だった。どちらも比較的近いビーチリゾートだし、銃も撃てるし(!)と迷ったのだが、結局グアムに決めた。

 あれから四半世紀。サイパンはやはり気になっていた。何といってもかつての日本の統治領であったし、米軍との激戦のあった場所である。日本人として一度は足を運んでみたかったのである。

 2017年の8月に遂にそこを訪れることができた。

 

 

 デルタ航空での機内食。穴子飯らしいのだが、穴子の貧弱さが泣ける。

 

 成田から飛ぶのはこのデルタのみで、飛行機のサイズもやけに小さくて狭い。

 

 25年前と異なり、サイパンはもはや観光地としては不人気な場所となってしまっていたのである。

 

 フィエスタリゾートというホテルに泊まったのだが、ホテルはなかなか良かった。

 

 部屋から海が見える。

 

 ホテルの部屋にはフリーWi-Fiがある。

 

 これからの観光地ではフリーWi-Fiスポットは必須であろう。

 

 前にもどこかで書いたと思うけれど、その点で東京はすごく遅れている。

 

 ホテルの夕食。ビュッフェのレストランを選んだ。

 

 ビールの飲み放題とのことであるが、缶ビール一種のみで、それも冷蔵庫から自分で出してくるスタイルであった。

 雑だなぁ……。

 

 感心したのがこのトイレ。

 

 つまみを捻るとノズルがにゅーっと出て来て水が出るのだが、電源等を使っていないで、水圧のみで動くのである。

 

 日本のシャワートイレは複雑すぎて故障しやすいし、停電になったら使い物にならない。

 

 日本でもこの方式が普及すればいいのに、と思ったが、よく考えたら常夏のサイパンと違って、冬場の日本の水道水じゃ冷たくて尻が大変な事になるか。

 

 戦跡をまわってみる。

 

 この場所に「ウェルカム」というのはどうなんだろう……。

 

 

 バンザイクリフ。

 

 ただ黙祷を捧げるのみ。

 

 たくさんの慰霊碑があった。

 

 日本軍の戦車の残骸。

 

 貧弱な戦車であるが、日本から運び込むにはサイズや重量の制限があったものと思われる。

 

 輸送力でも米軍とでは勝負にならなかったのだなぁ。

 

 

 

 日本軍の最後の指令部跡。

 

 米軍の砲撃によるものと思われる大きな穴が開いていた。

 

 日本軍の高射砲等。

 

 これらの武器の残骸は戦後に司令部のあったこの地に集められたものらしい。

 

 ここからもっと高台に行ったところにも行ったのだが、そこに中国語で日本の悪口が落書きされていたのを発見して、暗い気持ちになった。

 

 中国人観光客のしわざなんだろうけれど、どういう神経でそんなことするのかな。

 

 自分の止まっているフィエスタホテルのあるあたりも、かつては日本人の街だったことがわかる。

 

 そう思うと感慨深い。

 

 ABCマートでスパムむすびやホットドッグを買ってきて昼食にする。

 

 リンゴも買ったのだが、なぜかぐずぐずでクソ不味かった(たまたまハズレに当たってしまったらしい)。

 

 ホテルのある「ガラパン地区」といのうは、サイパンの中では繁華街らしいのだが、どこかうらぶれている。

 

 なんか、日本だと「場末の繁華街」という感じなのだ。

 

 人気がなくてさびれ、さびれて人気がなくなる、という悪循環なのかもしれない。

 

 廃墟となったホテルもあった。

 

 かつてJAL系列のホテル・ニッコー・サイパンという高級ホテルもあったが、今では中国資本になってしまっているらしい。

 

 今回のプランで嬉しかったのは、専用のラウンジが自由に使えて、朝には軽食、夕方には「バー・タイム」と称して、軽食とビールやワインが飲み食べ放題で利用出来たことだ。

 

 海を見ながら飲むビールは実に気分のいいものだった。

 

 バータイムのつまみはここから自由に取っていく。

 

 ただ、マイッタことに、これを夕食として本気食いをする中国人一家がいて、食べ物を殆ど根こそぎ持って行ってしまうのだ。

 

 そこで、2日目からはバー・タイムの始まる17時ちょうどにラウンジに駆け込み、彼らの来る前につまみを確保することとなった。

 

 落ちていく夕日が美しい。

 

 明け方5時ごろ、窓の外で大声がするので目が覚めてしまった。

 

 「なんだなんだ」と窓を開けて外を見たら、5階のベランダにいる中国人が、1階の外にいる仲間の中国人と会話しているのだ。

 

 離れているので、当然大声になるのだが、なんでこんな非常識な時間に非常識な声で会話を……。

 

 ああ、やはりこの地はもはや「場末」なのだ。

 

 フィエスタホテルの前の海は泳げるスペースがやたら狭い上に、魚もほとんどいないので、タクシーで北部へ移動した。

 

 ここはとあるホテルのプライベートビーチ。別に宿泊客じゃなくても自由に泳げた。

 

 このビーチが当たりだった。

 

 水深が浅いにも関わらず、魚がたくさんいるのだ。

 

 このビーチには短時間しかいなかったのだが、色々な魚に出逢うことが出来て大満足だった。

 

 現地で見つけたアサヒビール。

 

 「パシフィックブルー」という商品名で、日本では見かけない銘柄なので、輸出専用なのか? それとも現地生産なのか?

 

 これを書いている今なお謎のビールである。

 

 スーパーマーケットに行ってみる。

 

 海外ではへたな観光地よりも、こういった所の方が面白かったりする。

 

 プレートランチが全部揃った状態で冷凍になっている。

 

 種類も豊富で、こういう文化がいかにもアメリカである。

 

 パンも冷凍で売られているのだ。

 

 アメリカでは巨大冷蔵庫(冷凍庫)が必須なんだろうね。

 

 日本の誇る「ぽろいち」も進出していた。

 

 アメリカが冷凍食品大国なら、日本はインスタント麺大国である。

 

 

 ベッドメイキングのチップと一緒に、娘が「THANK YOU」というメモをベッドの所に置いておいた。

 

 帰ってきたらこのような返事のメッセージが。

 

 チップの習慣というのはどうもなじめないのだが、こういうのがあると嬉しいよなぁ。

 

 今日も夕日が美しい。

 

 夕食にフィエスタホテルの隣にある、ハイアット・リージェンシーのビュッフェレストランに行ってみた。

 

 テラス席、というおしゃれな言葉につられたのだが、要するに屋外である。

 

 当然のことながらクソ暑かった。失敗したぁ。

 

 

 海側と反対側の丘の上に見事な月が出た。

 

 

 

 帰りの空港で。意外に日本食が多く売っていた。

 

 日本が恋しくなった日本人観光客は、帰国前にこういう日本食に手を出してしまうのであろうか。

 

 帰りの機内食。

 

 小麦粉の生地で、鶏肉や野菜を巻いてある。

 

 正直言ってデルタの機内食はイマイチであった。だが他に選択肢がないもんなぁ。

 

 でも、ビールはプレモルなのが嬉しい。コップまでつけてくれたし。

 

 ホテルの売店で買ったカップ麺。

 

 「おおっ、刀削麺のインスタントだ!」と、4ドル50セントもするのに買ってしまった。

 

 日本円だと約500円。えらい高いカップ麺である。

 

 日本に帰ってきてから食べてみたら。

 

 これってただのワンタンの皮じゃん!! しかも美味しくない!

 

 「どこが刀削麺だ! ぼったくりだ!」

 

 あらためて生産国を確認したら、中国だった。

 

 振り返れば、中国にやられっぱなしの旅行だったなぁ。

 

 


 

 とにかくサイパンの観光客は中国人だらけだった(それと韓国人か)。彼らは日本人観光客とは違うのですぐにわかる。かつての日本人観光客がそうであったように、全般的に品がなくてうるさいのだ。しかも場所を選ばず。

 だが、このすっかり「場末」になってしまったサイパンの姿は、日本社会の未来図であるのかもしれない。生産者人口が減り続け、社会保障費で財政は破綻し、日本中の繁華街がやがて「場末」となっていくのは時間の問題なのかもしれない。

 その時には金のある中華資本が日本の企業も土地もすべて買占め、日本の新たな統治者として君臨する日なのかもしれない……。

 

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