近くて遠い国、台湾

 日本が1972年に中華人民共和国と国交を結んだため、それ以来国交を断絶してしまった国、台湾。しかし、かつての日本の植民地であったため、日本との関係は深く、同じ日本の植民地であった韓国よりもずっと親日的な国だ。

 台湾は東日本大震災の時には、なんと200億円以上もの義援金を提供してくれたのである。もちろんこれは世界各国の中でも一番高額なだけではなく、台湾の人口を考えると突出した数字である。にもかかわらず、日本政府は震災支援感謝のメッセージを米英仏韓露中六カ国の新聞には掲載したが、台湾の新聞には掲載しなかった。台湾を国家と認めない中国に阿ったのである。近いのに遠い国。台湾。

 小岩に安くて美味しい台湾料理屋があり、その点でも以前からこの国のことはずっと気になっていた(結局食い意地かい!)。

 今回仕事で初めて台湾を訪れた。

 

 

 羽田空港6:20分集合なので、5:00に家を出た。

 

 正直きつかったけれど、おかげでモノレールから美しい日の出を見ることができた。

 

 

 機内食。飛行機はJALだったので日本の食事。

 

 函館のレストラン「五島軒」の監修したオムライスなのだそうだが、まあ普通のオムライスだった。

 

 日本の航空会社だとおおきなハズレはないのだろうけれど、海外の航空会社のようなエキゾチックな食事が出ないのがちと寂しい。

 

 空から眺める台湾の街。

 

 訪れたのは10月なのだが、30度越えと日本の真夏なみに暑い。

 

 水道水は胃腸の軟弱な我々日本人にはちょっと無理らしいので、喉が乾いたら水か清涼飲料水を買うしかない。

 

 コンビニで買ったCCレモンとスポーツドリンク。

 CCレモンはおいしかったけど、日本のものとちょっとだけ味が違っていたように思う。

 

 グローバル化が進み、日本で見られるような店が台湾でも普通に見られる。

 

 面白いと思ったのが信号機。

 

 カウントダウンが表示されるのだが、その下の人の点滅は動くのである。

 

 最初は早歩き程度のスピードなのだが、残り10秒を切ると、駆け足に変わるのである。

 

 なんだか焦らされているような気がしないでもないけど。

 

 中正記念堂(蒋介石を讃える施設)。

 

 衛兵は任務中、微動だにしない。最初、人形かと思ったほど。任務とはいえスゴイ。

 

 銀メッキの銃は「M1ガーランド」といって、米軍が第二次世界大戦の時に使っていた銃である。

 

 衛兵という重要な任務に就くのに、なんだってこんな旧式の銃を……?

 

 もっとも、守っているのが蒋介石の像なので、こんなものをわざわざ破壊しにくるテロリストがいるとも思えないので、これでいいのかな?

 

 とあるレストランでトイレの中にあった「嘔吐盆」。

 

 この国にも酔っ払って嘔吐する困った人間がいるということなのかな?

 へたなところに吐かれると店としては迷惑なので、これはいい発想かもしれない。

 

 日本の居酒屋等でも是非採用してほしいアイディアである。

 

 おなじみセブンイレブン。

 

 滞在先のホテルから歩いて3分ぐらいのところにあるので重宝した。

 

 

 売っているものは日本とは微妙に違っている。

 

 ビールは日本の「キリン秋味」が普通に売られていた。

 

 台湾ではメジャーだという「台湾啤酒」、飲んでみたかったな(今回は仕事なのでアルコールは×なのだ)。

 

 

 

 

 

 驚いたことに「おでん」があった。

 

 しかし、良く見ると表面に「ラー油」とおぼしき油膜が浮いている。台湾風おでんということかな。

 

 地下鉄構内で、バイオリンを弾く老人。

 この他にも、ギターを弾く老人もいた。

 

 台湾のストリート・パフォーマーは年期が入っているのだ。

 

「トークン」と呼ばれる、地下鉄に乗るための切符替わりのもの。

 

 入場する時、これを改札に入れるのかと思いきや、タッチさせる。IC内蔵のコインなのだ。

 

 退場する時は、今度はこれを改札機に入れる。

 

 おもしろいシステムである。

 

 あろうことか、危険で不便なエスカレーターの片側整列乗車が台湾でも蔓延していた。

 

 日本だけの現象だと思っていたので、正直これはショックだった。

 

 日本の影響なのか? 困ったことである。

 

 地下鉄のホームは日本よりずっと幅広い。そしてホームドアも完備されている。

 

 

 

 車内のつかまるための手すりが、このように三又のものが中央に配置されていて、これなら複数の人間でつかむことができて便利である。

 

 地下鉄の椅子はプラスチック製で配置も面白い。

 

 プラスチックだと座り心地は今一つだけど、掃除は楽で衛生的だと思う。

 

 今や台湾を代表するランドマークともいえる、「台北101」ビル。101階まであるのでこの名称だとか。

 

 

 

 台北101ビルのマスコット・キャラクター。

 

DAMPER BABY」というらしい。

 

 顔が「101」って、そのまんまやんけ。

 

 この101ビルのフードコートで昼食をとることにした。

 

 すごい数の飲食店があり、目移りしてなかなか決められない。

 

 結局、「北投魷魚」という店で、台湾名物の「魯肉飯(台湾風肉かけご飯)」を食べることにする。

 

 色々なセットがあったのだが、「特別推薦!!」と銘打っていた「招牌魯肉飯套餐」を頼む。「招牌」というのは、「看板メニュー」という意味だとか。

 

 注文が済むと、これを渡された。

 

 出来上がりを知らせる呼び出し機なのだが、昔の携帯電話のようにでかい!

 

 これが「招牌魯肉飯套餐」。

 

 右下は「紅焼肉」というもので、台湾風トンカツといった感じのもの。衣がサックリしていて美味しい。

 

 右上はレバーの冷製なのだが、臭みが全く無く、サックリとした食感。紹興酒が欲しくなる。

 

 色々な具が入ったスープと魯肉飯も美味しく、これで165元(日本円で約570円)。すごく安い。

 

 せっかく台湾まで来たのだからと、名物のかき氷も食べてみる。

 

ICE MONSTER」という店に入ってみる。

 

 後で知ったのだけれども、この店、日本にも神宮前と大阪とに出店しているのだね。

 

「新鮮芒果綿花甜(マンゴーかき氷)」。

 

 かき氷とアイスはマンゴー味なのだけれども、マンゴー果肉のトッピングが品切れで、代わりにパイナップルとなった(右側の小皿)。

 

 こんなに大量のかき氷を果たして食べられるのか? と思ったのだけれども、ペロッといけちゃいました。日本のかき氷のように途中で溶けてきたりせず、最後までふんわりさっくりだったし。

 

 これで、220元(日本円で約760円)。ちなみに日本だと同じものが1,500円する。

 

 何故か気になった「新宿髪型」の文字。

 

 美容院のようなのだが、「新宿髪型」ってどんな髪型なのだ!?

 

 

 台湾はバイクが多い。

 

 有名な「鼎泰豊」の小籠包。

 

 台北101ビルにも店舗があったのだが、すごい行列だったので諦めていた。

 

 ところが、たまたま三越デパートの地下を覗いたら、ここにも店舗があり、しかもテイクアウトもやっているというので急遽購入。

 

 出来上がりまで10分ほど待たされたけれど、10個入りで210元(日本円で約725円)と安い。

 

 皮は意外に薄くてモチモチ。中のスープは上質で美味。これが本場の味かぁ! と感動。

 

「寧夏夜市」。

 

 夜市もまた台湾の名物である。

 

 この雰囲気、ワクワクするなぁ!

 

 とにかく色々な店があり、肉でも魚でもなんでもアリと言う感じである。

 

 この店で、台湾名物の「臭豆腐」を食べてみることにする。

 

 豆腐を醗酵させたもので、日本のクサヤのように強烈な臭いがあるが、ハマる人は熱烈に好きになるという。

 

 クサヤだったら普通に食えるので、いっちょう、臭豆腐にもチャレンジしてみるか、となったのだが……。

 

 ガイドブックによれば、油で揚げたものは臭いが気にならないとのことであったが、口に含むと強烈な臭気。○○○が腐ったような臭い。クサヤどころの騒ぎじゃないよ、これは。

 

 その後、下の方の辛いタレをたっぷりつければなんとか食えることがわかったが、問題は普通の厚揚げに比べて特にプラスアルファの旨さを感じなかったこと。

 

 臭豆腐、私はハマりませんでした。

 

 ちなみにお値段は45元(日本円で約155円)。

 

 夜市のある通りの、歩道にテーブルを出している簡素な店で、やはり台湾名物の「牛肉麺」を食べる。

 

 

 

 これが牛肉麺。

 

 麺は中華麺とも日本のうどんとも違う独特の食感。

 

 スープの味もなんとも形容しがたい複雑な味。

 

 煮込まれた牛肉がホロホロとしていて美味しい。

 

 これで110元(日本円で約380円)とすごく安い。

 

「九份」。階段が続く繁華街。

 

 ジブリのアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルになったとか言われていて、それで知名度が高いらしい。

 

 雨が多い土地らしく、この日もゲリラ豪雨のようなひどい雨にたたられた。

 

 湯婆婆の油屋のモデルとなったと言われる「阿妹茶樓」。

 

 ……とこの時はそう信じ込んでいたのだが、その後日本に帰って調べたら、この「千と千尋の神隠しは九份がモデル」という説はジブリによってハッキリ否定されていることを知った。

 

 にもかかわらず、この店は看板に「湯婆婆の屋敷」と掲げ、お客さんには「千と千尋の神隠し 婆婆の屋敷」と日本語で書かれたポストカードを配布している。

 

 いいのか!?

 

 せっかくなので湯婆婆の屋敷のモデルとなった店(と信じきっていた)で、お茶を飲んでみる。

 

 お茶とお茶菓子のセットで300元(日本円で約1,035円)と決して安くないが、お湯は何度もおかわり出来るし、急須や湯飲みがセットとなった本格的な台湾のお茶が堪能できる。

 

「臺北戯棚(TaipeiEYE)」という劇場で京劇も観た。

 

 この日は西遊記をモチーフにした劇だった。

 

 基本的に台詞は中国語であるが、アクションシーンの動きがダイナミックで素晴らしく、言葉がわからなくても十分に面白かった。

 

「故宮博物館」。

 

 石で出来た「角煮」と翡翠で出来た「白菜」が特に有名らしいのだが、この時期、角煮はどこかに貸し出しているらしく、見ることができなかった。

 

 かわりに三つある白菜が全部揃っており、そういうことは珍しいらしいので、ありがたく拝見する。

 

 

 これが一番大きくて有名なやつらしい。

 

 正直言って、白菜にはそんなに感動しなかったのだけれども、国語教員としては、「完璧」の語源となった藺相如の話に出て来る「玉壁」が観られたことや、「鴻門の会」で項羽の軍師・范増が腰に下げている重要アイテムの「玉玦」が観られたことが嬉しかった。

 

 帰りもJAL便だった。

 

 うなぎご飯。うなぎは高いので表面にのっている三きれのみ。さみしー。

 

 安くて旨いものがたくさんあった台湾のご飯が懐かしい。

 

 


 のんびり台湾観光を楽しんだように思われるかもしれないけれど、実は仕事なのでほとんど時間的に余裕がなくて、あっちこっち駆け足だったんだよね。今度はゆっくりプライベートで行ってみたいものである。そんな魅力のある国であった。

 

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