土手の最後のバーベQ

 毎年ゴールデンウイーク中に、近所の土手で数家族で集まってバーベQをやっている。 最初にこのプランを呼びかけたのはM氏で、彼は必要な道具類一式を買い揃えてくれた。だが、どうも彼はオートキャンプみたいなものにあこがれていたようで、回を重ねるごとにターフだのディレクターチェアだの、荷物がやたらと増えていくのには閉口した。食後の後片付けが面倒なのだ。
 それが、最近になって付近一帯の駐車禁止が厳しくなり、飲酒運転も厳罰化したため、荷物の運搬に車が使えなくなった。
 これで大幅に規模を縮小か? と期待したものの、M氏は自宅からキャリーカートを使用することによって、簡易テーブル等を運び込み、少しでも疑似オートキャンプに近づけようとするのであった。執念だな。

 さて、そんなこんなでもう10年近くも続けてきた土手のバーベQであるが、それが今年を限りにできなくなるかもしれないことになってしまった。

 

そら豆1.jpg

 

 そら豆はさやごと焼く。そうすると、中が蒸し焼き状になるのだ。

 外側がいくら焦げても中は大丈夫。

そら豆2.jpg

 

 ……おっと、若干焦げたのもあったか。

ビール.jpg

 

 ビールはステンレスのカップに注ぐ。

 やはりビールは缶そのままより、別容器に注いだ方がおいしい。

 土手の上は風が強いので、紙コップ等は向かない。空の状態だと飛んで行ってしまうからだ。

 

 この日は特に強風で、空いた缶が何度もすっ飛んで行った。

 

ホタテ.jpg

 

 ホタテは醤油をつけながら焼く。

 刷毛を持つ手はM氏。柔道家なので、ごつい手である。

アスパラとキノコ.jpg

 

 アスパラとキノコを焼く。

 キノコはエリンギとホンシメジだ。

 かつては人工栽培が不可能と言われていたホンシメジだが、最近になってそれが可能になり、値段もずいぶん下がったのである。

 スーパー等でよく見るブナシメジと違って、サイズが大きく旨味が強い。

カマ焼き.jpg

 

 ブリとカンパチのカマ。

 魚介の食材調達はM氏の担当だったのだが、この他に海老やイカ等も登場し、何やらバーべQというよりは炉端焼きの趣であった。

 

鶏手羽1.jpg

 

 玉ねぎと鶏手羽。

 鶏手羽は霧島鶏。安い手羽先も炭火で焼くと、表面の皮がパリッとなって、しかも中はふんわりで実に美味。

ハラミと肩ロース.jpg

 

 いよいよ真打ち。黒毛和牛だ。

 肩ロースと細長いのはハラミ。たまたま近所のスーパーで売っていたのだが、和牛のハラミというのはめずらしいのではないかと思う。

豚バラ.jpg

 

 厚切りの豚バラ肉骨も焼く。

 脂の多い豚バラは炭火でじっくりこんがりと焼くと、表面がカリッとして脂も抜けるので、まさにバーべQ向きの食材だ。

焼きおにぎり.jpg

 

 シメは焼きおにぎり。これまた表面がこんがりと焼けてとてもおいしい。

 その後、コーヒーを入れ(疑似キャンプにこだわるM氏はわざわざパーコレーターに携帯ガスコンロを持ち込んでコーヒーを入れるのだ)、串にさしたマシュマロも焼く。

 焼いたマシュマロをコーヒーに入れるとこれまたうまいんだな。

和牛塊肉.jpg

 

 食べきれなかった和牛のイチボ肉の塊はローストビーフにしてお土産にする。

 まずは直火で表面を焼く。

和牛塊肉2.jpg

 

 その後、このようにアルミホイルで包んでじっくりと蒸し焼きにする。

和牛塊肉3.jpg

 

 焼き時間は適当にカンでやったのだが、けっこううまくいった。

 見よ、この美しい断面を!

土手の様子.jpg

 

 これがその土手の上。右側に行くと荒川がある。

 流しやトイレもあり、ここでバーべQをする人は多く、区民の憩いの場となっていた……のだが。

 

 バーべQをやっている時に、なにやら警備員のような制服を着た人が巡回してはバーべQをやっている人たちに何かを言っているのが見えた。我々のところにもやってきたその警備員モドキの人は、紙を手渡してこう説明した。近くの公園に有料のバーベQ場が出来たので、今後はそこを利用してほしい。ここは原則として火器の使用は禁止になる、と。

 その有料施設は一区画2,000円だという。公営の施設だというのに高いなぁ! そこを利用させるためにこの土手をバーべQ禁止にしたとしか思えないような措置である。

 我々を含め、大半の人が後始末やゴミの処理などのマナーを守って使用していたというのに……。

 だが、たぶん雇われの身であろうその警備員モドキの人に文句を言っても仕方がない。

 だから、我々はたぶん最後になるであろうここでのバーべQの残り時間を楽しみ、名残を惜しむこととした。

 

 誰かが、M氏に向かって「あなたがノンアルコールビールで我慢すれば、どこへだって行けるんだよ」と言った。「うん、そうだ!」と俺も調子に乗って同意する。

 だが、もちろんM氏は決して首を縦に振らなかった。当たり前か。

 

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